最高裁判例
昭和52年6月20日最高裁第二小法廷判決(民集31巻4号449頁・判例時報856号3頁)
【事案の概要】
拘束された即時両建預金600万円がある場合、貸付金合計1150万円に対し「実質金利」をどのように判断するか。
【判決内容】
「右取引条件の故に実質金利が利息制限法1条1項所定の利率を超過する結果を生じ、ひいては遅延損害金の実質的割合も同法4条1項所定の割合を超過する結果を生じてしまっている以上、右超過部分は、同法の法意に照らし違法なものとして是正しなければならない。
その方法としては、前記各即時両建預金が存在しているため実質金利が利息制限法に違反する結果を生じていた期間中、本件貸付契約中利率及び遅延損害金の割合に関する約定の一部が無効になるものとして是正するのが相当であり、上告人が支払った利息のうち実質貸付額550万円を元本として利息制限法1条1項~を超過した部分は、民法488条又は489条により、本件貸付契約又は本件別口貸付契約の残存元本債務に充当されたものと解するのが相当である。」
【判決の意義】
- 反対債権(預金)を相殺ではなく、「即時充当」により処理されるものであると判断している。
別口債務への充当指定がない場合の超過支払利息は民法489条によって、相殺などの当事者の意思表示が必要な処理ではなく、別口へ「即時充当」されることを判示している。 すなわち、過払い金を拘束預金と考えた場合、新たな貸付に対して過払い金を相殺ではなく「当然充当した上で実質貸付額」を確定されるべきである、と判断している。 - 利息制限法の潜脱を許さない統一的解釈の基礎となる判断を行った。
実際に利用可能な「実質貸付額」と「実際に利用した期間」の2つの要素によって利息制限法の制限利率を超えているか否かを判断するべきであることを明確に判示している。
すなわち、1150万円の貸付金のうち預金債権600万円を差し引いた550万円が実質貸付額であると判断した。
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