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司法書士 三谷耕三

司法書士 三谷耕三
東京司法書士会所属 第3887号

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最高裁判例

平成17年12月15日最高裁第一小法廷判決

いわゆるリボルビング方式の貸付けについて,みなし弁済の要件を否定した判決

【判決の意義】

この判決以前には、リボルビング取引においては、「返済期間」「返済額」について確定的な記載をすることは不可能であるとして、厳格な記載がなされていない場合でも「17条書面の要件を満たす(みなし弁済を認める)」とする判断がなされた下級審判例が少なからずあった。
しかし、本判決は、43条1項を厳格に解釈し、完済までの確定期間・返済額等の記載の不可能なリボルビング払いにおける17条書面にも、確定期間に準じた記載をすべき義務を認め、17条書面の要件を満たさないとして、みなし弁済の適用を排斥した。

【問題となった争点】

  1. 貸金業の規制等に関する法律17条1項に規定する書面に同項所定の事項について確定的な記載をすることが不可能な場合に同書面に記載すべき事項
  2. いわゆるリボルビング方式の貸付けについて,貸金業法17条1項に規定する書面に「返済期間及び返済回数」及び各回の「返済金額」として記載すべき事項について

【争点に対する判断】

仮に、当該貸付に係る契約の性質上、法 17 条1項所定の事項のうち、確定的な記載が不可能な事項があったとしても、貸金業者は、その事項の記載義務を免れるものではなく、その場合には、当該事項に準じた事項を記載すべき義務があり、同義務を尽くせば、当該事項を記載したものと解すべき。

リボルビング方式の場合に、個々の貸付けの時点での残元利金について、最低返済額及び経過利息を毎月 15日の返済期日に返済する場合の返済期間、返済金額等を 17 条書面に記載することは可能であるから、上告人は、これを確定的な返済期間、返済金額等の記載に準ずるものとして、17 条書面として交付する書面に記載すべき義務があったというべきである。

【判決全文】

  1. 原審の適法に確定した事実関係の概要等は,次のとおりである。
    (1) 上告人は,貸金業の規制等に関する法律(以下「法」という。)3条所定の登録を受けた貸金業者である。
    (2) 上告人は,平成3年4月13日,被上告人との間で,次の内容の金銭消費貸借基本契約を締結し,その契約書を被上告人に交付した(以下,この契約を「本件基本契約」といい,この契約書を「本件基本契約書」という。)。 ア 借入限度額 20万円 借主は,借入限度額の範囲内であれば繰り返し借入れをすることができる。 イ 借入利率 年43.8% ウ 返済方法 毎月15日限り元金1万5000円以上と支払日までの経過利息を支払う。
    (3) 上告人は,平成3年4月13日から平成14年5月20日までの間,被上告人に対し,本件基本契約に基づき,第1審判決別紙計算書の「年月日」欄記載の日に,「借入額」欄記載のとおり金銭を貸し付け(以下,これらの貸付けを併せて「本件各貸付け」という。),被上告人から,同計算書の「年月日」欄記載の日に,「返済額」欄記載のとおり弁済を受けた(以下,これらの弁済を併せて「本件各弁済」という。)。
    (4) 上告人は,本件各貸付けの都度,被上告人に対し,営業店の窓口における貸付けの場合には「領収書兼取引確認書」又は「残高確認書」と題する書面を,現金自動入出機(ATM)を利用した貸付けの場合には「領収書兼ご利用明細」と題する書面(以下,この書面と上記「領収書兼取引確認書」又は「残高確認書」と題する書面を併せて「本件各確認書等」という。)を,それぞれ交付した。
    (5) 本件基本契約書と本件各確認書等のいずれにも,法17条1項6号に掲げる「返済期間及び返済回数」や貸金業の規制等に関する法律施行規則(昭和58年大蔵省令第40号。以下「施行規則」という。)13条1項1号チに掲げる各回の「返済金額」の記載はない。
  2.  
  3. 本件は,被上告人が,上告人に対し,本件各弁済の弁済金のうち,利息制限法所定の制限利率により計算した金額を超えて支払った部分を元本に充当すると過払金を生じていると主張して,不当利得返還請求権に基づいて,過払金の返還等を求める事案である。
    これに対し,上告人は,貸金業者は,貸付けに係る契約を締結したときは,法17条1項各号に掲げる事項についてその契約の内容を明らかにする書面(以下「17条書面」という。)を貸付けの相手方に交付しなければならないとされているところ,本件基本契約は,返済方法について返済額の決定を被上告人にゆだねる内容となっているため,上告人において法17条1項6号に掲げる「返済期間及び返済回数」や施行規則13条1項1号チに掲げる各回の「返済金額」を記載することは不可能であるから,上告人が被上告人に対して法17条1項所定のその余の事項を記載した書面を交付していれば,17条書面を交付したことになるのであって,本件各弁済は法43条1項の規定の適用要件を満たしており,同項により,利息制限法1条1項所定の制限利率により計算した金額を超えて支払った利息部分は有効な利息債務の弁済とみなされ,元本に充当されることにはならないから,過払金は生じていないと主張して,被上告人の上記主張を争っている。
  4.  
  5. (1) 貸金業者の業務の適正な運営を確保し,資金需要者等の利益の保護を図ること等を目的として,貸金業に対する必要な規制等を定める法の趣旨,目的(法1条)等にかんがみると,法43条1項の規定の適用要件については,これを厳格に解釈すべきものであり,17条書面の交付の要件についても,厳格に解釈しなければならず,17条書面として交付された書面に法17条1項所定の事項のうちで記載されていない事項があるときは,法43条1項の規定の適用要件を欠くというべきである(最高裁平成15年(オ)第386号,同年(受)第390号同16年2月20日第二小法廷判決・民集58巻2号475頁参照)。
    そして,仮に,当該貸付けに係る契約の性質上,法17条1項所定の事項のうち,確定的な記載が不可能な事項があったとしても,貸金業者は,その事項の記載義務を免れるものではなく,その場合には,当該事項に準じた事項を記載すべき義務があり,同義務を尽くせば,当該事項を記載したものと解すべきであって,17条書面として交付された書面に当該事項に準じた事項の記載がないときは,17条書面の交付があったとは認められず,法43条1項の規定の適用要件を欠くというべきである。
  6. (2) 前記事実関係によれば,本件各貸付けは,本件基本契約に基づいて行われたものであるが,本件基本契約の内容は,
    ① 被上告人は,借入限度額の範囲内であれば繰り返し借入れをすることができる,
    ② 被上告人は,元金について,返済すべき金額の最低額(以下「最低返済額」という。)を超える金額であれば,返済額を自由に決めることができる,というものであることが明らかである。
    すなわち,本件各貸付けは,本件基本契約の下で,借入限度額の範囲内で借入れと返済を繰り返すことを予定して行われたものであり,その返済の方式は,追加貸付けがあっても,当該追加貸付けについての分割払の約束がされるわけではなく,当該追加貸付けを含めたその時点での本件基本契約に基づく全貸付けの残元利金(以下,単に「残元利金」という。)について,毎月15日の返済期日に最低返済額及び経過利息を支払えば足りるとするものであり,いわゆるリボルビング方式の一つである。したがって,個々の貸付けについての「返済期間及び返済回数」や各回の「返済金額」(以下,「返済期間及び返済回数」と各回の「返済金額」を併せて「返済期間,返済金額等」という。)は定められないし,残元利金についての返済期間,返済金額等は,被上告人が,今後,追加借入れをするかどうか,毎月15日の返済期日に幾ら返済するかによって変動することになり,上告人が,個々の貸付けの際に,当該貸付けやその時点での残元利金について,確定的な返済期間,返済金額等を17条書面に記載して被上告人に交付することは不可能であったといわざるを得ない。
    (3) しかし,本件各貸付けについて,確定的な返済期間,返済金額等を17条書面に記載することが不可能であるからといって,上告人は,返済期間,返済金額等を17条書面に記載すべき義務を免れるものではなく,個々の貸付けの時点での残元利金について,最低返済額及び経過利息を毎月15日の返済期日に返済する場合の返済期間,返済金額等を17条書面に記載することは可能であるから,上告人は,これを確定的な返済期間,返済金額等の記載に準ずるものとして,17条書面として交付する書面に記載すべき義務があったというべきである。
    そして,17条書面に最低返済額及び経過利息を毎月15日の返済期日に返済する場合の返済期間,返済金額等の記載があれば,借主は,個々の借入れの都度,今後,追加借入れをしないで,最低返済額及び経過利息を毎月15日の返済期日に返済していった場合,いつ残元利金が完済になるのかを把握することができ,完済までの期間の長さ等によって,自己の負担している債務の重さを認識し,漫然と借入れを繰り返すことを避けることができるものと解され,確定的な返済期間,返済金額等の記載に準じた効果があるということができる。
  7.  

前記事実関係によれば,本件基本契約書の記載と本件各確認書等の記載とを併せても,確定的な返済期間,返済金額等の記載に準ずる記載があると解することはできない。したがって,本件各貸付けについては,17条書面の交付があったとは認められず,法43条1項の規定の適用要件を欠くというべきである。 4 以上と同旨の原審の判断は,正当として是認することができる。論旨は,採用することができない。よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。(裁判長裁判官 島田仁郎 裁判官 横尾和子 裁判官 甲斐中辰夫 裁判官 泉 德治 裁判官 才口千晴)

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